詩/マツザキヨシユキ
1980年(15歳)の時に出版した第一詩集から、今までに書いた詩をアーカイブ
ラベル
童女 M
の投稿を表示しています。
すべての投稿を表示
ラベル
童女 M
の投稿を表示しています。
すべての投稿を表示
あの夕焼け空の下で
あとがきに代えて
あの夕焼け空の下で
こっちを向いている人がいる
夕暮れの風にふれて
こっちへとんでくる
思いがある
あなた ありがとう
そっと耳もとで
ささやいた
あなたは
なにか考え事をしているけど
ぼくは
あなたの方を向いて
いつも ささやいている
あなた ありがとう
昭和五十五年六月
-〈童女 M -16の詩-〉新風舎 1980
組詩 この空の下で
Ⅰ
しずかに
しずかにして下さい
風もやんで下さい
太陽は赤く空にとけて下さい
あなたは
部屋にいていいのです
窓辺に立って
窓を半分だけ開けて下さい
しじまは遠くで
みていてください
きいていてください
車の音も
電車の音も
できるだけ遠くで鳴って下さい
あなたはしじまに向かって
話して下さい
つぶやくように
ささやくように
ひとことでいいのです
とびきりやさしいことばを
Ⅱ
トランペット吹きの少年は
公園にいて
トランペットを吹いて下さい
手から離れていった風せんは
決して割れないで下さい
いつでも
やさしさは
悲しみを芳らせて
いますね
あなたの瞳の深さは
湖の色に似て下さい
海の深さは悲しすぎます
Ⅲ
夜は花がうたって下さい
ぼくがねむってしまったら
花たちよ
うたって下さい
雨の日には雫たちも
一緒にうたって下さい
絶えずうたって下さい
ぼくよ
花よ
やさしいうたを
だれか絶えず
注ぎ続けられたなら
あなたはそれに気づかないでも
いつも うたっていましょう
とびきりやさしいうたを
いつも きっと こころこめて
あなたに
-〈童女 M -16の詩-〉新風舎 1980
春雷
どこまでも遠く響いている
すこしでも大地と共になろうとして ひくく
すべての雨と風とを伴いどこまで行くのか
青い大地を更に青くぬろうとして
かわいた人の喜びを少しでも潤そうとして
できるだけひろく雄々と
どこまでも行くのか
頭(こうべ)をたれて思う人の心を
天と地の中間に怒らせながら
この夜の果てまでも 行くのか
限りないやさしさと
勇気を持って……
-〈童女 M -16の詩-〉新風舎 1980
夜
泣きたいのだ 泣きたいのだ
涙を出しきってしまいたいのだ
自分の流した涙におぼれてしまっても
それでもまだ泣くのだ泣きたいのだ
流すのだ涙をいくらでも
人の夢の中まで
濡らしてしまった
それでも
足りない
いくらでも泣きたいのだ
悲しみが闇の彼方に流れ去っても
それでも きっと泣くのだ
都会のかわきに
交わることが
できるようになるまでいつまでも
-〈童女 M -16の詩-〉新風舎 1980
月夜の中で
この月夜の中で
いったい何が起こっているのだろう
春の月はそれだけで もう夢のよう
月が雲にかくれる時
ましてやネコの気味悪くなき叫ぶ中
何が起こっているのだろう
この月夜の中で
-〈童女 M -16の詩-〉新風舎 1980
反対のこと
知ってることの不確かさと
知らないことの確かさ
戻ってこない山びこの悲しさと
叫べない 人の醜さ
燃え尽きない炭火のじれったさと
燃え上がる炎のうっとおしさ
思いつめる僕の苦しみと
気がつかないあの人の明るさ
-〈童女 M -16の詩-〉新風舎 1980
知ってること
雲は流れる 風は行く
大地はざわめく 人はうなだれる
時にははげしく 時にはやさしく
時にはうれしく 時にはかなしく
流れるのは時 行くのは歳月
ざわめくのは群集 うなだれるのは魂
雲は流れ 風は行く
人は生まれ そして去る
雲は流れ 風は行く
星は光り 人は見る
-〈童女 M -16の詩-〉新風舎 1980
日々
少年は背の高さ程にがんばる
転んでも
走っても
夢はどこまでも遠く
なお 遠ざかる
走っても
叫んでも
少年は時々
雲を見上げて横たわる
けれど 気があせっている
すぐに
また立ち上がって行く
走り出すと足どりは重いが
過ぎ行く景色は素朴でいつも変わらない
それでも
なお 遠ざかって行く
夢が見える
-〈童女 M -16の詩-〉新風舎 1980
十一月
かちかちと柱時計の音もまた冷たく
しんしんと更けた夜
銀色の月光も凍りつかんばかりに
ひややかに
また犬なども闇にのまれたのか
我救えとばかりに叫ぶような
天上の光の穴よりもれる光は
あくまでもちかちかと
世は静まりかえり
時を失ったかのように
銀の光りの中に
銀の光のの中に
-〈童女 M -16の詩-〉新風舎 1980
童女 M
ひとつ ふたつ みっつ よっつ
きみは
別れたグラスの破片を
机の上に並べる
いつつ むっつ ななつ やっつ
ぼくは
きみのしなやかな桃色の指と
海のように深くすんだ目とを
かわるがわる見ている
ひとつ ふたつ みっつ よっつ
指をさして数えるきみの
あどけないしぐさを見て
いつつ むっつ ななつ やっつ
ぼくの胸の中で
グラスの割れる音がする
-〈童女 M -16の詩-〉新風舎 1980
そして冬
君は柿の実を一つ
ぼくに落とした
ありがとう 君ってやさしいんだね
ぼくのことばに君は頬を染めた
ぼくは君がかわいくてしかたなかった
でも
言わなければならなかった
さようならだ 来年まで
まっすぐと登っていたけむりが
わずかに揺れるのが見えた
君が好きだよ と
心の中でつぶやいた
冬も もう
すぐそこまで
ぼくを 風が
吹きぬけて行った
-
『中三時代(
10
)』(旺文社)作品コーナー一
席 1979初出
-〈童女 M -16の詩-〉新風舎 1980
海にきた日
こうしてあなたを見ていると
ぼくは何だか不安になります
あなたは余りにも明るすぎて
よく笑うものだから
まるで風になったみたいに
浜辺を駆けて行くものだから
そのまま
風になって
どこかに行ってしまいそうで
海の青さに
溶け込んでしまいそうで
不安になるのです
海に来た日
その夜は
あなたと ふたりきりで居たい
-〈童女 M -16の詩-〉新風舎 1980
秋の事件
夕日を眺めながら
都会の少年たちは
ありもしない
故郷のことを思う
時計が鳴っても
母が呼んでも
里は もうすっかり
秋色に染まったという
まっすぐと登ったけむりは
やがて夕焼け雲と まじわってしまうという
さて 都会はといえば
電車の扇風機にカバーがかかり
夏の果てなかった夢や思い出が
ころがっているだけ
-
『中三時代(2
)』(旺文社)作品コーナー二席 1979初出
-〈童女 M -16の詩-〉新風舎 1980
ひみつ
ふたりの愛を誓い合う
そんな儀式は
些細なことでいい
そして
できれば ひみつが
ふたりを覆(おお)ってくれるといい
ぼくらはふたりきり
夕陽の部屋で
一本のたばこを吸ってみてはどうだろう
きみのうつくしい横顔から
けむりがゆっくりと離れてゆくのが
見えるようだ
たばこなんか
真面目(まじめ)なきみはいやがるだろうか
それでも
けむりは
やがて僕等を包んでくれるに
違いない
あたりの空気は
ひみつのにおいを
漂わせるに違いない
ふたりの愛を誓い合う儀式には
そんな些細なひみつが欲しい
そんな ふたりだけの
ひみつが欲しい
-〈童女 M -16の詩-〉新風舎 1980
東から
夜はまだ明けず
東からかすかな風が吹く頃
虫たちの合奏はクライマックスを迎える
境界線が風を従えて闇を追って来るんだ
やがて
朝の生き物たちが声をあげ始めると
虫たちの合奏は
潮がひくように消えて行くんだ
-〈童女 M -16の詩-〉新風舎 1980
雨の思い出
雨の中をびしょ濡れになって駆けて行ったのは
誰だったろう
生まれる前みたいな広いところに
ただ雨だけが降っていて
そこにぼくが居たなんて
九十九里へ行って
飛鳥へ行って……
ああ かならず出会った雨は
まだ
ぼくともうひとりの中に
しみ込んでいるだろうか
雨を見上げ雲を見上げ
落ちてきた雫は
ふたりの想い出だったのか
心に深く染み込んでいるのか
-〈童女 M -16の詩-〉新風舎 1980
夏の訪れ
葉が風に揺れ
滴(しずく)が落ちる
すると滴は
虫たちにしか聴こえない
かすかな音とともに
地面に達する
そして
地面に着いた滴たちは
陽光を浴びて
やがて
夏の匂いを放ち始める
-
『中三時代(
10
)』(旺文社)作品コーナー三席 1979初出
-〈童女 M -16の詩-〉新風舎 1980
序詩
知っていますか
あなたが駆けだせば
そこにひとつの
風が生まれるということを
知っていますか
あなたが微笑めば
そこから美しい
光の輪が広がるということを
心の中には無限の泉があって
常にほとばしり
いくらでも そとに
あふれでているということを
-〈童女 M -16の詩-〉新風舎 1980
ホーム
登録:
投稿 (Atom)