今までに刊行された詩集

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童女 M -16の詩- 
1980年 新風舎 松崎義行 解説/柳瀬登 装画/村山隆治

NONE  -とりあえず10代の君に- 
1980年 新風舎 松崎義行 解説/東けいこ

大器晩成 
1980年 私家版 松崎義行

SEVEN STEPS  
1982年 新風舎 松崎義行 解説/秋村宏

ナノテクノロジーなの。恋の魔法なの。 
2005年 新風舎 マツザキヨシユキ イラスト/おおの麻里

バスに乗ったら遠まわり 
2005年 ミッドナイト・プレス マツザキヨシユキ 帯/谷川俊太郎  装画/原マスミ 解説 岡田幸文

童女 M -16の詩- 復刻版 
2005年 新風舎 松崎義行 解説/松田朋春/山本かずこ・松尾理絵・小野良子

二つの川の交わるところ 
2006年 新風舎 雨沢滴 解説/谷郁雄

100万円あげる 
2007年 新風舎 マツザキヨシユキ イラスト/中村隆

CU 君に愛はやってくる
2007年 新風舎 マツザキヨシユキ イラスト/ナタリヤ・リボヴィッチ 翻訳/小林香 翻訳監修/パメラ・ミキ

天秤座の彼女
2013年 kindle ポエムピース電詩文庫 マツザキヨシユキ  編・解説/外岡浩

小峰に纏わりつく猫
2013年 kindle ポエムピース電詩文庫 マツザキヨシユキ  編・解説/外岡浩

ここは花の島
2013年 IBCパブリッシング 写真/野口勝宏 花作家/橋本和弥 詩/マツザキヨシユキ 帯/谷川俊太郎




あの夕焼け空の下で

あとがきに代えて



あの夕焼け空の下で
こっちを向いている人がいる

夕暮れの風にふれて
こっちへとんでくる
思いがある

あなた ありがとう

そっと耳もとで
ささやいた

あなたは
なにか考え事をしているけど
ぼくは
あなたの方を向いて
いつも ささやいている

あなた ありがとう


      昭和五十五年六月



     -〈童女 M -16の詩-〉新風舎 1980

組詩 この空の下で


 

しずかに
しずかにして下さい
風もやんで下さい
太陽は赤く空にとけて下さい
あなたは
部屋にいていいのです
窓辺に立って
窓を半分だけ開けて下さい
しじまは遠くで
みていてください
きいていてください
車の音も
電車の音も
できるだけ遠くで鳴って下さい
あなたはしじまに向かって
話して下さい
つぶやくように
ささやくように
ひとことでいいのです
とびきりやさしいことばを

 Ⅱ

トランペット吹きの少年は
公園にいて
トランペットを吹いて下さい
手から離れていった風せんは
決して割れないで下さい
いつでも
やさしさは
悲しみを芳らせて
いますね
あなたの瞳の深さは
湖の色に似て下さい
海の深さは悲しすぎます

 Ⅲ

夜は花がうたって下さい
ぼくがねむってしまったら
花たちよ
うたって下さい
雨の日には雫たちも
一緒にうたって下さい
絶えずうたって下さい
ぼくよ
花よ
やさしいうたを
だれか絶えず
注ぎ続けられたなら
あなたはそれに気づかないでも
いつも うたっていましょう
とびきりやさしいうたを
いつも きっと こころこめて
あなたに


      -〈童女 M -16の詩-〉新風舎 1980

春雷

どこまでも遠く響いている
すこしでも大地と共になろうとして ひくく
すべての雨と風とを伴いどこまで行くのか
青い大地を更に青くぬろうとして
かわいた人の喜びを少しでも潤そうとして
できるだけひろく雄々と
どこまでも行くのか
頭(こうべ)をたれて思う人の心を
天と地の中間に怒らせながら
この夜の果てまでも 行くのか
限りないやさしさと
勇気を持って……



   -〈童女 M -16の詩-〉新風舎 1980

泣きたいのだ 泣きたいのだ
涙を出しきってしまいたいのだ
自分の流した涙におぼれてしまっても
それでもまだ泣くのだ泣きたいのだ
流すのだ涙をいくらでも
人の夢の中まで
濡らしてしまった
それでも
足りない
いくらでも泣きたいのだ
悲しみが闇の彼方に流れ去っても
それでも きっと泣くのだ
都会のかわきに
交わることが
できるようになるまでいつまでも


 
     -〈童女 M -16の詩-〉新風舎 1980

月夜の中で

この月夜の中で
いったい何が起こっているのだろう
春の月はそれだけで もう夢のよう
月が雲にかくれる時
ましてやネコの気味悪くなき叫ぶ中
何が起こっているのだろう
この月夜の中で


     
       -〈童女 M -16の詩-〉新風舎 1980

反対のこと

知ってることの不確かさと
知らないことの確かさ

戻ってこない山びこの悲しさと
叫べない 人の醜さ

燃え尽きない炭火のじれったさと
燃え上がる炎のうっとおしさ

思いつめる僕の苦しみと
気がつかないあの人の明るさ



   -〈童女 M -16の詩-〉新風舎 1980

知ってること

雲は流れる 風は行く
大地はざわめく 人はうなだれる

時にははげしく 時にはやさしく
時にはうれしく 時にはかなしく

流れるのは時 行くのは歳月
ざわめくのは群集 うなだれるのは魂

雲は流れ 風は行く
人は生まれ そして去る

雲は流れ 風は行く
星は光り 人は見る



   -〈童女 M -16の詩-〉新風舎 1980

日々

少年は背の高さ程にがんばる

転んでも
走っても

夢はどこまでも遠く
なお 遠ざかる

走っても
叫んでも

少年は時々
雲を見上げて横たわる
けれど 気があせっている
すぐに
また立ち上がって行く

走り出すと足どりは重いが
過ぎ行く景色は素朴でいつも変わらない
それでも
なお 遠ざかって行く
夢が見える



   -〈童女 M -16の詩-〉新風舎 1980

十一月

かちかちと柱時計の音もまた冷たく
しんしんと更けた夜
銀色の月光も凍りつかんばかりに
ひややかに
また犬なども闇にのまれたのか
我救えとばかりに叫ぶような

天上の光の穴よりもれる光は
あくまでもちかちかと
世は静まりかえり
時を失ったかのように

銀の光りの中に
銀の光のの中に

   

   -〈童女 M -16の詩-〉新風舎 1980

童女 M

ひとつ ふたつ みっつ よっつ
きみは
別れたグラスの破片を
机の上に並べる

いつつ むっつ ななつ やっつ

ぼくは
きみのしなやかな桃色の指と
海のように深くすんだ目とを
かわるがわる見ている

ひとつ ふたつ みっつ よっつ
指をさして数えるきみの
あどけないしぐさを見て

いつつ むっつ ななつ やっつ

ぼくの胸の中で
グラスの割れる音がする



   -〈童女 M -16の詩-〉新風舎 1980

そして冬

君は柿の実を一つ
ぼくに落とした

ありがとう 君ってやさしいんだね
ぼくのことばに君は頬を染めた

ぼくは君がかわいくてしかたなかった
でも
言わなければならなかった
さようならだ 来年まで
まっすぐと登っていたけむりが
わずかに揺れるのが見えた

君が好きだよ と
心の中でつぶやいた

冬も もう
すぐそこまで

ぼくを 風が
吹きぬけて行った

     
       -『中三時代(10)』(旺文社)作品コーナー一席 1979初出   
  -〈童女 M -16の詩-〉新風舎 1980

海にきた日

こうしてあなたを見ていると
ぼくは何だか不安になります

あなたは余りにも明るすぎて
よく笑うものだから

まるで風になったみたいに
浜辺を駆けて行くものだから
そのまま
風になって
どこかに行ってしまいそうで
海の青さに
溶け込んでしまいそうで

不安になるのです

海に来た日

その夜は
あなたと ふたりきりで居たい
 

     -〈童女 M -16の詩-〉新風舎 1980

秋の事件

夕日を眺めながら
都会の少年たちは
ありもしない
故郷のことを思う

時計が鳴っても
母が呼んでも

里は もうすっかり
秋色に染まったという
まっすぐと登ったけむりは
やがて夕焼け雲と まじわってしまうという

さて 都会はといえば
電車の扇風機にカバーがかかり
夏の果てなかった夢や思い出が
ころがっているだけ


   -『中三時代(2)』(旺文社)作品コーナー二席 1979初出
  -〈童女 M -16の詩-〉新風舎 1980

ひみつ

ふたりの愛を誓い合う
そんな儀式は
些細なことでいい
そして
できれば ひみつが
ふたりを覆(おお)ってくれるといい

ぼくらはふたりきり
夕陽の部屋で
一本のたばこを吸ってみてはどうだろう
きみのうつくしい横顔から
けむりがゆっくりと離れてゆくのが
見えるようだ

たばこなんか
真面目(まじめ)なきみはいやがるだろうか

それでも
けむりは
やがて僕等を包んでくれるに
違いない

あたりの空気は
ひみつのにおいを
漂わせるに違いない

ふたりの愛を誓い合う儀式には
そんな些細なひみつが欲しい
そんな ふたりだけの
ひみつが欲しい


   -〈童女 M -16の詩-〉新風舎 1980

東から

夜はまだ明けず

東からかすかな風が吹く頃
虫たちの合奏はクライマックスを迎える

境界線が風を従えて闇を追って来るんだ

やがて
朝の生き物たちが声をあげ始めると
虫たちの合奏は
潮がひくように消えて行くんだ

   
   -〈童女 M -16の詩-〉新風舎 1980

雨の思い出


雨の中をびしょ濡れになって駆けて行ったのは
誰だったろう
生まれる前みたいな広いところに
ただ雨だけが降っていて
そこにぼくが居たなんて

九十九里へ行って
飛鳥へ行って……
ああ かならず出会った雨は
まだ
ぼくともうひとりの中に
しみ込んでいるだろうか

雨を見上げ雲を見上げ
落ちてきた雫は
ふたりの想い出だったのか

心に深く染み込んでいるのか


   -〈童女 M -16の詩-〉新風舎 1980

夏の訪れ


葉が風に揺れ
滴(しずく)が落ちる

すると滴は
虫たちにしか聴こえない
かすかな音とともに
地面に達する

そして
地面に着いた滴たちは
陽光を浴びて
やがて
夏の匂いを放ち始める


  -『中三時代(10)』(旺文社)作品コーナー三席 1979初出
  -〈童女 M -16の詩-〉新風舎 1980

序詩

知っていますか
あなたが駆けだせば
そこにひとつの
風が生まれるということを

知っていますか
あなたが微笑めば
そこから美しい
光の輪が広がるということを

心の中には無限の泉があって
常にほとばしり
いくらでも そとに
あふれでているということを

 
   -〈童女 M -16の詩-〉新風舎 1980