組詩 この空の下で


 

しずかに
しずかにして下さい
風もやんで下さい
太陽は赤く空にとけて下さい
あなたは
部屋にいていいのです
窓辺に立って
窓を半分だけ開けて下さい
しじまは遠くで
みていてください
きいていてください
車の音も
電車の音も
できるだけ遠くで鳴って下さい
あなたはしじまに向かって
話して下さい
つぶやくように
ささやくように
ひとことでいいのです
とびきりやさしいことばを

 Ⅱ

トランペット吹きの少年は
公園にいて
トランペットを吹いて下さい
手から離れていった風せんは
決して割れないで下さい
いつでも
やさしさは
悲しみを芳らせて
いますね
あなたの瞳の深さは
湖の色に似て下さい
海の深さは悲しすぎます

 Ⅲ

夜は花がうたって下さい
ぼくがねむってしまったら
花たちよ
うたって下さい
雨の日には雫たちも
一緒にうたって下さい
絶えずうたって下さい
ぼくよ
花よ
やさしいうたを
だれか絶えず
注ぎ続けられたなら
あなたはそれに気づかないでも
いつも うたっていましょう
とびきりやさしいうたを
いつも きっと こころこめて
あなたに


      -〈童女 M -16の詩-〉新風舎 1980

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