そして冬

君は柿の実を一つ
ぼくに落とした

ありがとう 君ってやさしいんだね
ぼくのことばに君は頬を染めた

ぼくは君がかわいくてしかたなかった
でも
言わなければならなかった
さようならだ 来年まで
まっすぐと登っていたけむりが
わずかに揺れるのが見えた

君が好きだよ と
心の中でつぶやいた

冬も もう
すぐそこまで

ぼくを 風が
吹きぬけて行った

     
       -『中三時代(10)』(旺文社)作品コーナー一席 1979初出   
  -〈童女 M -16の詩-〉新風舎 1980

1 件のコメント:

  1. 15才っていう中途半端な年齢の揺れてる感じが伝わりますね。
    (城田)

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