雨の思い出


雨の中をびしょ濡れになって駆けて行ったのは
誰だったろう
生まれる前みたいな広いところに
ただ雨だけが降っていて
そこにぼくが居たなんて

九十九里へ行って
飛鳥へ行って……
ああ かならず出会った雨は
まだ
ぼくともうひとりの中に
しみ込んでいるだろうか

雨を見上げ雲を見上げ
落ちてきた雫は
ふたりの想い出だったのか

心に深く染み込んでいるのか


   -〈童女 M -16の詩-〉新風舎 1980

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