秋の事件

夕日を眺めながら
都会の少年たちは
ありもしない
故郷のことを思う

時計が鳴っても
母が呼んでも

里は もうすっかり
秋色に染まったという
まっすぐと登ったけむりは
やがて夕焼け雲と まじわってしまうという

さて 都会はといえば
電車の扇風機にカバーがかかり
夏の果てなかった夢や思い出が
ころがっているだけ


   -『中三時代(2)』(旺文社)作品コーナー二席 1979初出
  -〈童女 M -16の詩-〉新風舎 1980

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